わたしが宇宙に行った話②
わたしは人間ではなくなった。
膨大に拡張していく意識の中、信じられないほどの速さで深遠の淵に向かっている事は理解できた。
暗闇の中、万華鏡のように反射する幾何学模様の中心に何度も入っていく。
光よりも速いスピードでその現象の中に向かっていく私は事態を飲み込むことが出来ない。
まずそれ以前に何が起こっているのかが分からなかった。
恐怖で身体が震えて、恐ろしいほどの悪寒が襲ってきた。
私は今死んでいるのか生まれているのかその概念すらも分からない。
次々とやってくる嫌悪感や恐怖で意識せずとも身体が丸くなっているが分かった。
後から聞いたのだが、このとき私は布団に包まって号泣していたらしい。
感情の制御が出来なくなり、猛スピードで移り変わっていく感情と現象がピークに達した
その瞬間、自我が完全に崩壊し、自己を確立させている何かが溶けて消えた。
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・・目を開けずともその光景は鮮明に、そしてはっきりと見えた。
なにも無い暗闇の中に私はひとつの意識となってそこにいた。
上を見上げると真っ赤な色をした巨大なブラックホールが見え、それを囲むように無数の星が眩しいほど輝いていた。この時、はっきりと恍惚的感情で有難いという気持ちになったのを覚えている。
気がつけばまた上を向いて号泣していた。その光景を冷静に観察している物質的な自分がいたのも覚えている。
難しい言い方だが号泣している自分を冷静な自分が肉体的視点から見ている様なそんな感じだ。
非現実的感情に浸りながら号泣し全ての物に感謝をした。
今思えば恐らく、此処が宇宙だったのだと思う。
暫くすると私はその巨大なブラックホールに飲み込まれ、また意識の膨張が始まった。
宇宙の中では時間軸など関係無い。
今起こっていることが現実では1秒か1万年か分からないがそんなことどうでもよかった。
同じような幾何学模様のトンネルを旅していき、最後の壁を突き抜けた瞬間、私はまたしても恍惚的感情に襲われた。
意識の目を開けると私は母のお腹の中にいた。
味わったことの無い安堵感とポジティブな感情に包まれ太陽の光が強烈に眩しい。
私は指を口に咥えまるで赤子のようにキャッキャと笑っていた。
この時私は2度目の誕生を味わった。
続く